AI時代に必要なスキル、学生時代にやっておきたいことは? LINEヤフーの先輩エンジニアと女子学生の対談

コーポレート

「理系の勉強や仕事は男子(男性)の方が得意?」そんな疑問を持ったり、イメージしていたりする方も多いかもしれません。実際、日本のSTEM領域における女性の割合は他国と比べて低く(※1)、その理由としてロールモデルの不足、周囲からの反対や理系クラスに女性が少ないことなどが挙げられています。
LINEヤフーは、そんな既成概念やハードルを克服するため、STEM領域(※2)に進む女性を応援している山田進太郎D&I財団(※3)が提供する、中高生女子に向けたSTEM領域の職場体験プログラム「Girls Meet STEM Career」に参画。中高生のみなさんにインターネット業界を身近に感じていただくことを目的としたオフィスツアーなどを実施しています。

先日は、中高生女子4名をLINEヤフーにお招きし、理系の学問やエンジニアの仕事の魅力について先輩女性エンジニアと対談していただきました。AIをはじめとした情報社会で求められるスキル、技術の進化とともに変わる世界でつけておきたい力、学生時代にやっておきたいことなど、先輩エンジニアならではのエピソードやアドバイスが数多く飛び出した対談内容の一部をお届けします!

※1 日本のSTEM領域における女性の割合
日本において、STEM領域の職種の一つであるエンジニアとして働く女性の比率は、16.9%(OECD平均 20.0%)と低く、また、それに先立つSTEM領域への女性の大学進学率はOECD諸国の中で最低水準の19%となっている 参考)ヒューマンリソシア(株)「IT 分野のジェンダーギャップに関するグローバル調査」(外部サイト)
令和5年度文部科学省「学校基本調査」より理学部・工学部を合算して算出(山田進太郎D&I財団調べ)
※2 STEM
科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の頭文字を取った言葉で、いわゆる「理系」分野
※3 山田進太郎D&I財団の理念
D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進することで、ジェンダー・人種・年齢・宗教などに関わらず、誰もが自身の能力を最大限に発揮できる社会の実現へ寄与する

児玉 瑞穂(こだま みずほ)
2015年LINEに入社。現在は「LINEドクター」のバックエンド開発を担当。
松本 明弓(まつもと あゆみ)
2023年ヤフーに新卒入社。Yahoo!ショッピングのカートの金額や支払い情報、住所情報などの注文にまつわる手続き処理を主に担当。
中高生のみなさん
左から、さらさん、みおさん、ももかさん、りたさん。
「大学をどこにするのか、どの学部に進むかなどはまだ決まっていません。今回、お2人からいろいろなお話をうかがって、自分の将来について決めていけたらと思います!」

「エンジニアのお2人は今、どんな仕事をしているのですか?」

LINEドクターというオンライン診療サービスを担当しています。コロナ禍以降、対面診療よりもオンラインで済ませたいというニーズが増えました。LINEドクターはそのようなニーズに応えるために生まれたサービスです。

私は、LINEドクターのバックエンド、つまりサーバー側のアプリケーションを開発しています。お客様とお医者さんをうまくマッチングさせる方法や、待ち時間のない体験を提供する方法、誰でも簡単に医療を受けられるようにUIを工夫することなどを考えています。エンジニアスキルはあくまで手段であり、目的は「誰でも簡単に医療を受けられるようにすること」です。理系の知識や技術があれば、医療に限らず他のサービスでも、ユーザーが簡単に使える機能を形にできるのが、この仕事のやりがいであり面白さだと思います。

また、現在は3歳児の子育てをしながら働いています。子どもが急に病気にかかると仕事を休まなければならないこともあるため、自分の仕事を自分だけのものにせず、チームの誰でも対応できるように情報を共有しています。どのメンバーでも等しく対応できるように、技術力をチームで高め合うことを大切にしています。

出産前は1年ほど休むことに少し不安がありましたが、1年や2年のブランクなら意外とすんなり戻れると感じました。エンジニアの仕事は「自分の技術や頭脳で戦える」環境なので、性別による差を感じることはあまりありません。

私はYahoo!ショッピングを担当しています。
商品を購入する際にご利用いただくカートのバックエンドエンジニアとして、ポイント計算やお金の計算、住所やクレジットカードの情報など、さまざまな情報を管理しています。ショッピングサービスでは最終的に「注文確定」ボタンを押していただくことで注文が完了します。このボタンが押されないと、サービス全体のお金の流れが止まってしまいます。責任のある仕事ですが、それだけにとてもやりがいを感じています。

「AI時代において、中高生の私たちがつけておくべき力は?」

便利なツールや技術が増えてきている中で、出てきた情報が正しいかどうかを判断する力、つまり情報を判別する方法を持っていることが重要だと思います。
たとえば、SNSを使っているときでも、情報の出典がどこなのか、あるいは情報が一部だけ切り取られていないかを気にすることが大切ですよね。AIでも同様で、正しい情報ではなく、少し違った情報が出てきたときに、それが本当に正しいのかを調べる力が必要だと思います。

最近では、「Perplexity」や「Genspark」といった、回答した情報の参考情報を教えてくれるAIがあります。これらを使うと、どのデータを参考にしてその回答が生成されたのかわかるので、私は検索用途ではこれらのAIを使用しています。
また、出てきたデータが本当に正しいかどうかを確認するために、参考元のリンクを見て、そのサイトが適切かどうかを判断し、情報の正確性を確認するよう心がけています。

仕事でもAIを使ってコーディングをしていますが、現時点ではAIが生成するコードが必ずしも最適とは限りません。もちろん正しいコードが出てくることもありますが、そのまま使うとパフォーマンスが悪くなってしまうこともあります。そのようなときに、自分で「このコードは良くないから、もっとこうしてほしい」とAIに指示できる力が必要です。

学生のみなさんは、AIに対して恐怖心を持つこともあるかもしれませんが、実際に使ってみないと何が怖いのか、何が正しいのかを判断することは難しいと思います。「まずは試してみる」というフットワークの軽さで、いろいろなことに挑戦してみてほしいです。

AIは何でもできる魔法のようなものではありませんし、逆に、全てが間違っていて役に立たないものでもありません。新しい技術にはあまりハードルを感じずに接し、冷静な目で本当に正しいかどうかを見極める力が必要だと思います。

SNSの切り抜きやフェイクニュース、そしてChatGPTなどのAIも、さも正解のように見える情報を出してくることがありますが、実際には間違っていることも多いです。どの情報を本当だと信じるべきかを判断する力が重要です。たとえば、ネット上の情報よりも本や論文などのほうが確実です。そういった信頼性の高い情報源に意識を向けて情報に接することが大事だと思います。

また、AIに頼り過ぎないようにもしています。たとえばプログラミングをする際、途中まで自分で書いたら、あとは自動で作ってくれるツールがありますが、そういったものを使い過ぎると自分のスキルが向上しなくなってしまいます。

そして、児玉さんも先ほどお話していましたが、ツールが生成するコードがその時点で最適かというと、必ずしもそうではありません。AIは全体を見ずに周辺部分だけを見てコードを生成することが多いからです。

そのため、自分の技術力を向上させ、最適なプログラムを作成するためにも、AIに頼り過ぎずに使うべきところを見極めて使用しています。具体的には、AIを使うときには毎回、本当にそれが正しい選択かどうか考えています。たとえば、私が学生だった頃、国語の授業で「言葉を調べる際にはネットではなく辞書を使うように」と言われていました。辞書には周辺情報も載っていて、調べたい言葉だけでなく他の関連情報も身に付くからです。

機械学習やAIも知りたい情報だけを返してくれますが、自分で調べることで得られる周辺情報を知ることができません。AIを使うことで時間は短縮できますが、その分、知らずに終わってしまう情報があるのは本当に良いのかを考えながら使っています。ただ、急いでいるときにはAIを使うこともあります!

ちなみに、学生のみなさんにとって、AIってどういうイメージですか?

ChatGPTとか、考えた質問にすぐ答えてくれる、合っているか間違っているかはわからないけれど答えてくれるのは、すごく便利だなと思います。
でも、間違った情報とか、全然根拠がない感じで出てくるのも怖い感じもあるし、すごく大きい存在のようにも感じます。

なるほど。では、みなさんがAIを使うようになって、便利になったなと思うことはありますか?

私は自分の意見をうまく言葉にできないと感じるときに、AIがとても便利だと思います。授業でもそのような使い方をしていて。どう表現すればいいのか迷ったときに「じゃあちょっとAIに聞いてみようか」となるのですが、AIが生成する文章、うまいなって(笑)

たとえば、歴史の授業でキーワードを自分で文章から読み取り、それを「こういう感じでまとめてください」とAIに指示します。具体的には、キーワードをいくつか入力し、その間を埋めてもらうような使い方をしています。

ちなみに、夏休みの宿題でAIを使ったりはしなかったですか?

家庭科で、3食分の食事を作る宿題があって、何を作ろうか悩んだときに聞いてみました。ChatGPTに「簡単に作れる3食分、出して」みたいな感じで作ってもらって、レシピはレシピで別に調べました。

AIに頼りすぎずに、上手に使っていますね~!

「情報系、工学系の学部ではどのような事が学べるのか、その面白さについて知りたいです!」

私が情報分野を選んだきっかけは、当時はインターネットが普及し始めた頃で、パソコンを触るのがかっこいいと思ったのが始まりでした。
実際に大学に入ってみると、入学後に学部変更が可能なところも多いので、やってみて「なんか違うな」と思ったら変えるチャンスはいくらでもあります。
まず「これに興味がありそう」と思う分野に飛び込んでみるくらいの感覚で良いのではないかと思います。

まず、工学系についてですが、大学の理系は大きく分けて理学系と工学系があります。理学系は理論を追究する分野で、工学系は物づくりを行う分野です。
工学系の物づくりの楽しさは、「こんなことができたらいいな」と思ったものを実際に作れること。自分の考えたものの作り方を調べて、手を動かして実際に動かせるという経験は、「これは私が作ったんだ」と言える充実感があり、とても楽しいです。

情報系の魅力についてもお話ししますね。まず、情報系で楽しかったのは、世界が近く感じられる点です。プログラミング言語は世界共通で、多くのものが公開されていて誰でも使えることが多く、最新の技術や最高峰のものに身近に触れることができます。パソコン一つで多くのことができるのも、情報系の大きな魅力です。
それまでは、情報系のことを魔法のように思っていたのですが、実際は地道な数式や理論、そして先人たちが積み重ねてきた研究の上に成り立っていることを知りました。これが情報系の面白さだと感じています。

情報系の学科には多くの種類があります。たとえば、理学部の情報科学科ではプログラミング言語や情報そのものを学びます。一方、工学部では機械情報としてロボットにAIを搭載したり、ロボットにプログラムを組んで動かしたりします。また、電気情報では半導体に関連することなど、さまざまな分野があります。

大学で学科を選ぶときは、「情報と組み合わせて何をしたいか」をすごく考えました。たとえば、情報とロボット系、情報と物理、電磁気学、数学などの組み合わせがあります。私は数学が好きだったので、「数理情報」というところに進みました。大学1、2年生の授業で一番楽しかったのが「振動・波動論」の授業でした。これは波を数式で解き明かすもので、きれいな数式で物理現象を説明できることにわくわくしました。

わぁ...聞いてるだけで面白いなと思いました!

「お2人が学生時代に経験した、やって良かったこと、やっておけば良かったことは何ですか?」

勉強面については、どんな仕事でも将来的にグローバル化する可能性が高いので、英語のスキルは必須だと思います。
科目に限らず、私が学生時代、特に受験生のときによくやっていたのは、たとえば数学の問題を解いて答え合わせをした際に、間違っていた部分を分析することです。間違いを見つけたら、その問題のポイントを一言で書き留めておき、次に似たような問題を解くときに生かせるようにしていました。

生活面については、何か自分が欲しいと思うものを作ってみることが、今の仕事につながる点があります。これはプログラミングに限らず、たとえば縫いぐるみを手芸で作るなど、何でも良いと思います。欲しいものを作るためにどうやって調べるか、実際に作ってみて失敗し、次にどう改善するかといった流れが、今の仕事にもつながっています。

また、学生時代は同じような家庭環境や同じ世代の人たちと過ごすことが多いですが、アルバイトやボランティアなどを通じて、さまざまな人々と接して、考え方や仕事について知る機会を持つことが大切です。
たとえばLINEヤフーのサービスも多様なユーザーに使っていただいているので、社会にいろいろな人がいることを理解する必要があります。私は学生時代にそれをあまり経験できませんでしたが、想像力を広げる意味でも、そういった経験をしておくといいと思います!

私も、まずはいろいろな会社や業種を見ておくことが大切だと思います。たとえば、就職活動中は多くの情報を得ることができ、各社の特徴や業務内容を知る良い機会です。学生時代、携帯電話会社やIT企業、電機メーカーなどを見て回り、それぞれの会社がどのようなことをしているのかを知ることができました。そのように、学生時代でしか経験できないことを積極的に経験しておくことが大切だと思います。

また、学生時代にやっておけば良かったと思うことの一つは、リーダーシップを取る経験です。部活動などでリーダーシップを取る機会があると思いますが、私はそのような機会を避けてきました。たとえば、音楽系のサークルに所属していましたが、パートリーダーをやるかどうかのときに逃げてしまい、そのままリーダーシップを取らずに終えてしまったので、少し後悔しています...。

仕事になるとどんな小さなチームでもリーダーシップを取らなければならない場面が必ずあります。そのときに、リーダーシップを取った経験が少ないと、相手にどう伝えたら傷つけないだろうか? などと考え過ぎてしまい、言いたいことが言えなくなってしまうことがあるかもしれません。

また、リーダーが全てを自分でやろうとすると手が回らなくなってしまうので、「うまく他の人に任せる力」を身に付けることも大切です。そのような経験を学生時代にしておくといいと思います。たとえば、学級委員や委員長、修学旅行のリーダーなど、リーダーシップを取る機会があれば、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

対談後も、中高生のみなさんと社員の話は尽きませんでした。授業を終えてからの来社、ありがとうございました!

担当者からのメッセージ

今回の対談は、中高生のみなさんが理系の学問やSTEM領域の仕事の魅力について考えるヒントをお伝えできればと思い企画しました。学んだことや取り組んだことがそのまま将来に活かされることは少ないかもしれませんが、すべての経験がみなさんのかけがえのない財産となります。
「気になるな」「やってみたいな」と思うことに、ぜひ挑戦してみてください。広い世界には、背中を押してくれる先輩がたくさんいます。私たちLINEヤフーも、未来世代の挑戦を応援しています!
(CSR推進1チームリーダー:藤本)

関連リンク

取材日:2024年9月24日
※本記事の内容は取材日時点のものです

LINEヤフーストーリーについて
みなさんの日常を、もっと便利でワクワクするものに。
コーポレートブログ「LINEヤフーストーリー」では、WOWや!を生み出すためのたくさんの挑戦と、その背景にある想いを届けていきます。
Page top