連載:ファン&解説者が予想! 2022年のプロ野球

鳥谷敬が2022年セ・リーグ○×予想 「ヤクルト・奥川恭伸は最多勝の可能性も」

大利実

オリックスとの昨季の日本シリーズで初戦に登板したヤクルト・奥川恭伸。7回1失点と好投し、山本由伸と互角の勝負を見せた 【写真は共同】

 ルーキーイヤーの2004年途中から阪神の不動の遊撃手として、攻守に渡ってチームに貢献。20年にロッテに移籍し、翌21年に18年間の現役生活にピリオドを打った、稀代の名手・鳥谷敬氏。今季から野球解説者として活動する鳥谷氏が、スポーツナビがセ・リーグの球団ごとに用意したファンが気になるトピックに、○か×で回答する。

ヤクルト:奥川恭伸が最多勝を獲得する

鳥谷の予想「○」

――高卒3年目を迎える奥川投手。昨季は18試合の登板ながら、先発で9勝を挙げ、防御率3.26という成績を残しました。今季、最多勝を獲得できますか?

鳥谷 十分にあり得ると思います。昨季の後半、クライマックスシリーズの巨人戦でプロ初完封を飾るなど、大事な試合で見事なピッチングを見せました。日本シリーズでも安定感抜群の内容でしたね。あの終盤のピッチングを見て、今季は最多勝の可能性が十分にあると感じました。中6日でローテーションを守ることが絶対条件にはなりますが、奥川投手のピッチングスタイルを見ると、状態が悪いときでも試合を作る技術を持っていると感じます。

――技術的にもっとも優れたところはどこですか?

鳥谷 スライダーの使い方ですね。スライダーの出し入れで、ストライクを取り、空振りを取り、打たせて取ることができる。いろいろな球速、曲がり幅のスライダーを持っていて、それを操ることができるのが強みです。タイプ的には、前田健太投手(ツインズ)と重なるところがあります。

――15勝くらいは狙えますか?

鳥谷 打線との兼ね合いもありますが、昨季後半のピッチングができれば、15くらいは勝つと思います。

阪神:佐藤輝明が本塁打王を獲得する

昨季、打率.238、24本塁打、64打点の成績を残した阪神・佐藤輝明。2年目の進化に、大きな期待が寄せられる 【写真は共同】

鳥谷の予想「×」

――ルーキーイヤーの昨季、序盤からホームランを量産した佐藤輝明選手。後半戦は苦しみましたが、1年目で24本塁打を放ちました。今季、本塁打王のタイトル獲得となりますか?

鳥谷 残念ながら「×」です。岡本和真選手、村上宗隆選手の打力を考えると、彼らを上回るほどのホームランを打てるかとなると、まだ難しいかな。それに、風のある甲子園球場はなかなかホームランが出にくい。そのあたりも、タイトル獲得の壁になる気がします。

――佐藤選手に対する本塁打数への期待はいかがですか?

鳥谷 ひとつの基準としては、30本をクリアすること。飛距離は別格のものを持っているので、30本以上打つ力は十分にあります。カギは、開幕からコンスタントに結果を残せるかどうか。昨季の後半苦しんだだけに、スタートで落ち込んでしまうと、出場機会が減っていく可能性があります。ホームランを打つには多くの打席数が必要になるので、スタメンを確保することも条件になるでしょう。

巨人:岡本和真が令和初の三冠王に輝く

鳥谷の予想「×」

――2020年、21年と2年連続で本塁打王、打点王の二冠を獲得した岡本選手。令和初の三冠王の期待がかかりますが、実現の可能性はありますか?

鳥谷 打率を残すには足の速さに加えて、打順の問題も出てきます。チームが岡本選手に期待しているのは、ホームランと打点。そう考えると、三冠王は難しいと思います。たとえば、ランナーなしで岡本選手が打席に入るとき、多少強引でもいいので、ホームランを狙ってほしい場面が出てきます。打率を高めようとすると、ホームランが減っていく可能性があるので、三部門すべての数字を上げるのはかなり難しいですね。

――ヤクルトの村上選手にも同じことが言えますか?

鳥谷 そうなります。打率を考えると、足が速くて、内野安打で出塁できる選手のほうが有利だと感じます。

――昨季は打率.317でリーグトップだった鈴木誠也選手は、MLB移籍が報じられています。新たな首位打者候補は、誰になりそうですか?

鳥谷 阪神の近本光司選手、あと楽しみなのは広島の坂倉将吾選手ですね。

――坂倉選手は昨季、初の規定打席に到達し、打率.315の成績を残しました。

鳥谷 入団したときから、優れたバッティング技術を持っていました。2ストライク追い込まれても、自分のベストスイングでボールを捉えることができる。なかなかできることではありません。どのポジションで出場するかの問題もありますが、シーズン通して出続けることができれば、首位打者の可能性は十分にあると思います。

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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